「で、費用対効果は?」
AIを会社に申請すると、必ずこの一言が飛んできます。
上司は理解があっても、予算部門が「これはなんだ」と言い出す。数字を出さないと予算は取れない。でもAIの効果って、どう数字にすればいいのか。
ここで止まっている人、多いはずです。ぼくも、がっつり止まりました。
先に結論を言います。効果は1枚で出そうとするから迷子になります。2枚に分けてください。
- 1枚目: 定量的効果(お金の話。SaaS置き換えで書く)
- 2枚目: 定性的効果(人が育つ話。金額にしない勇気を持つ)
ぼくはこの2枚でClaude Teamを通しました。順番に説明します。
なぜ「時間短縮」で説明すると迷子になるのか
AIの効果説明でやりがちなのが、「1人あたり月◯時間の削減効果があります」という書き方です。
これ、予算部門には効きません。
理由はシンプルで、目に見える証明が難しいからです。「その時間、本当に削減されるの?」「削減された時間で何をするの?」と聞かれますし、自分が社長だったらそう思っちゃいます。
時間が浮いても、人件費は減らないので、会社のお金は1円も動いていないんですね。
「AIで生産性が上がります」も同じです。上がるかもしれませんが、紙の上では誰も検証できません。
もうひとつ、弱い理由があります。上司や予算部門が「効果」と言うとき、突き詰めて聞いているのは「で、人が減るの?」なんです。
人件費が減るなら一撃でGOです。でも、時間短縮は1人あたり月数時間ずつ、細切れに散らばるだけ。誰かが1人減るところまでは、なかなかいきません。だから「時間短縮です」は、上司の頭の中で「つまり人は減らないのね」に翻訳されて終わります。
検証できない数字は、稟議の世界では数字として扱ってもらえないんです。
1枚目: 定量的効果は「SaaS置き換え」で書く
そこで、いま実際に払っているお金を使います。
ぼくの場合はRPA(パソコン操作を自動化する月額ツール)でした。職場で月5万円払っていたんです。
そこでこう書きました。
定量的効果: RPAの自作による置き換え 現行RPA費用: 月50,000円 Claude Teamプラン(7名・Standardシート$20): 月約22,000円 差引: 月約28,000円のコストダウン
これなら予算部門も検証できます。RPAの請求書は実在するし、Claudeの料金表は公開されているからです。
つまり、疑いようがないんですね!
「効果が出るかもしれない話」ではなく「いま出ているお金が減る話」。稟議の言葉に翻訳すると、こうなります。
ポイントは、削減額よりも「検証できること」です。月2.8万円は会社にとって大金ではありません。でも「確実に検証できる黒字」は、どんなに大きな「検証できない効果」より強いんです。
2枚目: 定性的効果は、金額にしない
そして2枚目。ぼくはこう書きました。
定性的効果 ・部門のAIリテラシー向上 ・AI教育の促進 ・バイブコーディング教育による、自作アプリ開発人材の育成
大事なのは、ここを無理に金額換算しないことです。
「リテラシー向上により年間◯◯万円の効果」みたいな計算を始めると、また「その根拠は?」の無限ループに戻ります。
定性は定性のまま出す。その代わり1枚目の定量が「これだけで黒字です」を担保している。この分業が効きます。
予算部門は1枚目で納得し、上司や役員は2枚目で「将来への投資」として説明できる。読む人によって刺さる紙が違うから、2枚に分けるんです。
想定問答: これ、聞かれます
Q1.「RPAの置き換え、本当に作れるの?」
「作れる見込みがあるものから段階的に置き換えます」と答えました。全部を一気に、と言わないのがコツです。1個でも置き換われば定量効果は実証されます。
Q2.「作る工数は誰が持つの?」
既存業務の間接時間で対応、と整理しました。ここで新たな工数予算を要求すると話が二重になります。
Q3.「失敗したらどうするの?」
人数を最小構成にして始めて、四半期ごとに効果を見直す前提にしました。ぼくは年払いを選んだので(そのぶん1人あたりが安くなります)、途中でやめる想定ではありません。その代わり「人を増やすのは効果を確認してから」と、増やし方のほうにブレーキを見せました。
大事なのは、無条件に広げませんという姿勢を先に出すことです。承認する側が怖いのは、金額そのものより「気づいたら膨らんでいる」ですから。
置き換えられるSaaSが無い場合
「うちの部署、SaaS契約なんて無いよ」という人は、換算先を変えてください。
- 外注費: 毎年外部に頼んでいる作業(翻訳・資料作成・データ入力)はありませんか
- 既存ツールの保守費: ソフトの保守パックの中に、実は自作できる部分が混ざっていることがあります(機械や設備の安全に関わる保守は対象外です。あれは置き換えたら事故ります)
「いま払っているお金」を見つけて、そこに紐づける。型は同じです。
今日の一歩
やることは1つ。自分の部署が月額で払っているもの(SaaS・保守・外注)を1つ調べて、金額をメモする。
その金額が、あなたの費用対効果の1枚目になります。
紙の書き方より先に、置き換え先を見つける。順番はこれだけです!