「AI生成」「AIによって生成されたコンテンツです」
SNSで、こんなラベルを見かけること、増えていませんか?
X、TikTok、Instagram。気づけばあちこちに付いている。
「あれ、誰が付けてるの? なんで急に?」
こんにちは、だらリーヌです! ぼくは前の職場で全社のAIガバナンス(AIを安全に使うための決まりごと一式)づくりを担当していました。いまは製造業の会社でAI活用の推進をやっています。
あのラベルの背景にある大きな流れが、これです。
2026年8月2日から、EUで「これはAIですよ」と人間に分かるようにする義務が始まりました。 EU AI Actの第50条、透明性義務と呼ばれるルールです。
そして、日本で働くぼくらに、今すぐ同じ義務が課されるわけではありません。
「じゃあ関係ないや」
……と閉じるのは、ちょっと待ってほしいんです。EU発の規制は、あとから会社のルールに降ってくることがある。製造業は、それを何度も経験してきました。
今日は「EUで何が始まったのか」を、現場のことばで解説します。
EU AI Actは、AIをリスクでわける法律です
EU AI Actは、EUの包括的なAI規制。「違反したら罰金」の本気の法律です。
作りは意外とシンプルで、AIをリスクの高さでわけていて、それぞれに必要な対応を決めています。
- 禁止されるAI
- ハイリスクAI
- 透明性義務が課されるAI
- 最小限のリスクのAI
上に行くほど厳しく、下に行くほど自由。

今日の主役は、この中の「透明性義務」の段です。
透明性義務を、ものすごく簡単に言うと
「これはAIですよ」「これはAIで作られたものですよ」と、人間が分かるようにすること。 これだけです。
たとえばチャットボットなら、相手がAIだと分かるようにする。
AIで生成・加工したコンテンツやディープフェイク(本物そっくりの偽映像・偽音声)なら、AIによるものだと分かるようにする。
……それだけ?
それだけです。でもこの「それだけ」が、罰金もある本気の法律に義務として書き込まれた。ここが大きいと、ぼくは思っています。
冒頭のSNSのラベルに戻ると、正直に言って、あのラベルがそのまま「第50条への対応です」とまでは言い切れません。各社それぞれの判断で付けています。
ただ、「AIで作ったものはAIだと分かるようにする」という方向へ世界が動いているのは、たしかです。
なぜ「名乗る義務」が必要になったのか
理由は単純で、見分けがつかなくなったからです。
生成AIの性能が上がって、人間が作ったものとAIが作ったものの区別が難しくなりました。
ディープフェイクを、本物の映像や音声だと思い込んでしまうかもしれない。
チャットで人間と話していると思ったら、実はAIだった、もあり得る。
だから「AIであること」を最初から分かるようにして、誤認を防ぐ。これが透明性義務の考え方です。
ひとつ補足です。2026年8月2日に適用が始まったのは、透明性義務だけではありません。EU AI Actは段階的に適用が進んでいて、今回はその一部。この記事では透明性義務に絞っています。
「日本は関係ない」で済まない理由
日本には、EU AI Actと同じような罰則付きの包括的な透明性義務は、いまのところありません。
日本にもAIに関する法律や政策の枠組みはありますが、規制のアプローチがEUとは違います。
「EUで始まったから、明日からあなたも表示義務を守れ」という話ではないんです。ここは安心してください。
ただ、製造業で働いている人なら、この流れに見覚えがあるはずです。
EUの化学物質規制。EUの要求を意識して、日本の会社が製品対応をしてきた歴史があります。
最近だとCRAも、EU発です。
ことばメモ|CRA(サイバー・レジリエンス法) EU市場向けのデジタル製品に大きく関係する、セキュリティ対応の新しい規制。EUで売る製品は対応を迫られます。
EUで売る限り、EUのルールが事実上、自社のルールになっていく。AIの規制も、同じ道をたどる可能性があります。
「EU AI Actの透明性義務がそのまま日本の法律になる」と断定はしません。でも「EUの動きが、日本やグローバル企業のAIルールに影響してくる可能性があるから、今のうちから横目で見ておく」。この構えが、ちょうどいいやり方だとぼくは考えています。
今日の一歩
次にSNSで「AI生成」ラベルを見かけたら、「EUでは『AIだと分かるようにする』が義務になったんだよな」と思い出してみてください。
あのラベルが、ただの飾りに見えなくなってきます。
EU AI Actの動きは、これからも段階的に続きます。続報はこのサイトとSubstackで追いかけていくので、「うちの会社にもこんな話が降ってきた」というあるあるも、ぜひ聞かせてください!