AI「今週土曜日出勤です」

ファッッ!?

AIに初めて生産計画を立てさせたところ、土曜出勤を命じられました。

言っておくと、うちの人間が建てた計画は土曜出勤なしで回っています。

それをAIは、無慈悲に命じてきました。

こんにちは、だらリーヌです! 製造業の会社でAI活用の推進を担当しています。

生産計画が自動で回ればどんなに楽か。製造現場の人は一度は夢見たのではないでしょうか。

今回は自動化した結果…をお届けします!

うまく回っていた業務を、効率化したかっただけ

もともと生産計画は、現場をよく知る担当者が手で組んでいました。

ラインごとに流せる品種も能力も違うし、部品の入り具合も見ないといけない。 組み上げるのに半日以上かかることもある、重たい仕事です。

でも、できあがる計画はちゃんとしている。 つまり「品質は良いが、時間がかかる」典型で、効率化にはうってつけに見えました。

そこでAIと一緒に、計画を自動で組むアプリを作ったわけです。 設備の条件、稼働日、部品の納入予定。データを読み込ませて、いざ実行。

出てきたのが、冒頭の土曜出勤付き計画でした。

みんなの反応 「エエェェェェェェッッ!!😂」

犯人は、データに入っていない「暗黙値」

なぜAIは土曜が要ると言い、人間は平日で収められるのか。

調べていくと、AIの計算自体は間違っていませんでした。 渡したデータの通りに計算すれば、たしかに平日では足りない。

問題は、そのデータが現場の実力を知らないことでした。

  • 現場の担当者は、段取り替え(品種を切り替える準備作業)が少なくなる順番を経験で選んでいる。データにその工夫は入っていない
  • 30年前の古い設備が、データ上の想定より実は速い。「新しい設備ほど高性能」とは限らない
  • 設備の並びによって、一人で受け持てるラインの組み合わせが変わる。これもどこにも書いていない

人間の計画には織り込まれているのに、データには存在しない前提。 ぼくはこれを暗黙値(データになっていない現場の数字や前提)と呼んでいます。

暗黙値を知らないAIは、現場の実力を低く見積もるしかない。 足りない分の逃げ場が、土曜だったわけです。

左に低めの「データ上の能力」の棒、右に高めの「現場の実力」の棒。その差の部分に朱字で「AIはこの差を知らないので土曜に逃げた」

おすすめは「AIの計画と人間の計画を、両方AIに入れる」

暗黙値は、現場の人に「工夫を全部教えてください」と聞いても出てきませんでした。 本人にとっては当たり前すぎて、工夫だと思っていないからです。

ぼくのおすすめは、AIが立てた計画と、担当者が手で立てた計画を、両方まとめてAIに入れること。

そして聞きます。 「この2つの計画、どこが違う? 人間はなぜこの順番にしたと思う?」

差分の場所が、そのまま暗黙値のありかです。 「この2品種を続けて流すのは、段取りが共通だからでは」と、AIが違いを言葉にしてくれる。

出てきた言葉を現場に見せて、「そうそう」となったら条件に書き足す。 これで暗黙値が1つ、形式知(誰が見ても使える形に書き出された知識)に変わります。

「ルールと違うんだけど」とAIに詰められることもしばしばw

「AIが計画を作る」→「人間の計画と両方AIに入れて差分を聞く」→「差分=暗黙値を条件に書き足す」→「また作らせる」の4ステップが円環になっていて、中心に「1回で終わらせない」

大事なのは、これを1回で終わらせないことです。

条件を書き足したら、また作らせる。 また差分が出る。また聞く。また書き足す。

1周ごとに差分が減っていって、AIの計画が現場の計画に近づいていきます。 差分がなかなか減らなくても大丈夫。減り続けていること自体が、暗黙値の在庫が形式知に変わっている証拠なので。

AI導入で最初にぶつかる壁は、これ

この話、生産計画に限りません。

AIに業務を任せて「なんか違う」となるとき、たいていAIは間違っていなくて、渡したデータが現実を知らないだけです。

だからAI活用の最初の仕事は、かっこいいアルゴリズム選びではなく、まだデータになっていない部分を形式知にすること。 地味ですが、ここを飛ばしたAIは、いつまでも土曜出勤を命じてきますw

今日の一歩

自分の業務で「自分は当たり前にやっているけど、どこにも書いていない前提」を1つ、書き出してみてください。

順番の決め方でも、例外のさばき方でも、なんでもいい。 それがあなたの職場の暗黙値第1号で、AIに仕事を任せる日の最初の引き継ぎ資料になります。

ちなみに、あなたの職場の「データにはないけどみんな知ってる前提」、どんなのがありますか? 「あの機械は月曜の朝だけ機嫌が悪い」みたいなやつ、ぜひ聞かせてください!