「最後の申請は、ぼくが確認するまでしないで」

Claude in Chrome に出した指示のスクショ。勤怠管理システム(架空のダラリ重工業のもの)の8月分を埋める依頼の末尾、「最後の申請は、ぼくが中身を確認するまでしないで」の行を朱の枠で囲ってある

そう伝えたのに、AIは「申請」を押しました。

上司へ申請が飛んだ。

(架空のシステムなので実際は飛んでません🙏)

申請が飛んだあとの画面のスクショ。右の Claude の返答にある「申請番号 KT-2026-69654 で申請されました。所属長の承認をお待ちください」を朱の枠で囲ってあり、その下でぼくが「おいおい、申請しないでっていったじゃん。」と打っている

この一件で分かったことはひとつです。AIに「押すな」と指示するのと、システムとして押せないようにするのは、まったく別物。

こんにちは、だらリーヌです! 製造業の会社でAI活用を任されています。

この記事は、社内申請やシステム入力をAIのComputer Useに任せ始めた人に向けて書いています。

いま、AIにパソコンを触らせています

Computer Useは知っていますか?

AIが自分でブラウザや社内アプリを操作する機能です。

ブラウザの自動操作も便利なんですが、Computer Useのなにがいいかというと、PCの中に入っているアプリも操作してくれるんです。

GPT-6 Astraをはじめ、最近のAIはここがかなり強くなってきました。

会社での使い道は多いです。特に便利なのが社内システムへの入力、技術通知の作成や発行、特定の装置のシーケンス組み立て、3D CADのアシスタントなど。

今まで人がパソコンを触っていた仕事そのものをAIが代わりにやる世界が、かなり近づいています。

ただ、実際に使ってみて怖いこともありました。

「押さずに待って」を、AIは守らなかった

ある社内申請を、AIに入力してもらったときのことです。

入力はAIに任せて、最後はぼくが目で確認してから申請する。そのつもりで「全部入力したら、申請は押さずに待って」と伝えました。

ところがAIは、入力を終えたその流れで「申請」まで押しました。ぼくが内容を確認する前に、上司へ申請が飛んでいます。

いやいや、待てって言ったじゃん。

冒頭の画像でもわかるように指示ははっきり書きました。AIも読んでいます。

無慈悲に押しましたw

ここが、Computer Useならではの怖さです。

固定のスクリプトで自動化していれば、書いていない操作を勝手にやることはありません。

AIはその場で判断しながら動くので、指示の外側へ進むことがあります。

「固定のスクリプト」と「その場で判断するAI」の対比図。左は決められた手順の線路の上を走り、書いてない操作はしない。右はAIが判断しながら進み、指示の外側にある「申請」ボタンまで足を伸ばして押してしまう

「押すな」と言うのと、押せなくするのは別物

ここで気づきました。「AIに押すなと指示する」ことと、「システムとして押せないようにする」ことは、全然違う。

最終承認は人がやる、人間が確認してから進める。そういう運用ルールはもちろん作れます。

今回の「押さずに待って」も、その運用ルールそのものでした。

でも、それを指示したのにAIが突破した。つまり、運用だけでは限界があります。

指示で止める構造で止める
守るのはAIの判断システムそのもの
破られ方指示の外側へ進まれる押せないので破られない
今回押された押せなかったはず

「指示で止める」と「構造で止める」の対比図。左は人が「押すな」と指示し、AIがすり抜けて申請ボタンを押してしまう矢印。右は申請ボタン自体が無効化・非表示になっていて、そもそも押せない。同じゴール(誤申請を防ぐ)に2つの違うルートで到達している

では、どうするか。「AIに押さないよう教育する」のではなく、「そもそも押せない仕組みにする」のがベストです。

しかしながら、、、実はComputer Useの具体的な最適解は見つかっていません。

たとえば、こんな方向が良いと思っています。

  • ブラウザ拡張などで、特定のボタンを無効化する
  • 申請ボタンそのものを非表示にする
  • 確定処理の前に、別の確認工程を強制で挟む
  • AIが操作できる範囲そのものを、人が操作する範囲と分ける

製造現場では、これが当たり前

この考え方は、製造現場ではごく普通です。

「注意してね」で済ませない。間違えようとしても、間違えられないようにする。

工作機械なら、扉が開いていると動かない。いわゆるインターロックやフェールセーフの考え方です。

人は間違える前提で、構造で止める。それが現場のやり方です。

製造現場のインターロック比喩図。左は工作機械のガード(扉が開いていると動かない機構)。右はComputer Use中のAI操作(確定ボタンの前に強制の確認工程が挟まる)。矢印で「同じ思想」とつないでいる

AI時代も同じだと、ぼくは考えています。

AIをどこまで信用するか、ではありません。

「AIを信用しきらなくても事故らない仕組みをどう作るか」。

Computer Useを会社で本格的に使うなら、まずここを設計してから、任せる範囲を広げるのが本来かもしれない。

今回の申請でいえば、ぼくが確認するまで「申請」が押せない状態を先に作っておけば、AIがどう判断しようと上司には飛びませんでした。

指示の文面を工夫する話ではありませんでした。

今日の一歩

自分の業務で、AIに「指示」だけで止めている工程を1つ思い出してみてください。押すな、送るな、確定するな、のどれかです。

それを「押せない仕組み」に変えられないか、考えてみる。

  • ボタンを消す
  • 権限を分ける
  • 確認工程を1つ挟む

どれか1つで十分です。

社内システムにAIを触らせていいかは、会社のルールが先です。そこを確認したうえで、小さい申請から試すのをおすすめします。

こちらの備えは、まだAIの進化に追いついていません。

どう頑張っても、いまは完全なフェールセーフが組めない。押せなくする仕組みも、人が確認する工程も、どこかに抜け道が残る。

だから、いまは「気をつけようぜ!」が本音です。

小さい申請から。押されても困らないところから。少しずつ。

こういう「やってみて怖かった話」も含めて、会社でのAI活用の実況はSubstackで届けています。登録しておいてもらえるとうれしいです!