会社でAIを使いたいだけなのに、なぜか話がどんどん大きくなる。

上司に説明して、情シスに確認して、法務に投げて、AI管理チームにも見てもらう。

気づいたら、ただClaudeを使いたいだけなのに、社内稟議の小さな旅が始まっていました。

こんにちは、だらリーヌです!

ぼくはいま、いわゆるJTC企業の製造部門でAI活用を任されています。

もともとAIガバナンスを扱う職場にいたこともあり、今の部署では「AIまわりはだらリーヌに聞こう」という流れになりました。

今回やったのは、Claude Teamを会社で使えるようにするための申請です。

これがまあ、思った以上に長い旅でした!

この記事では、ぼくが実際に社内で確認したことを、ぜんぶまとめます。

同じように、会社でClaudeやChatGPT、Geminiなどの有料AIを通したい人の、たたき台になればうれしいです。

まず、うちの会社のAI事情

申請なしで機密情報を入れてもいいAIは、Copilot Chat(Microsoft E3付属の無償AI)だけです。

ChatGPT EnterpriseとM365 Copilotも使えますが、有料なので上司の許可つきで申請が必要です。しかも年2回しか申請できません!

そう、年2回です。タイミングを逃すと半年待ちです。

Gemini、Claude、その他のツールは「推奨」に入っていません。自分で1から確認して、情シス・法務・AI管理チームに申請しないと使えません。

ぼくが欲しかったのはバイブコーディングのツールだったので、Claude CodeをTeamプランで申請することにしました。

Claudeにした理由は単純で、プライベートで一番速くて快適だったからです!

ちなみに、Teamプランの中身(シートの種類や料金)は公式の日本語ページにまとまっています。 👉 Claude 料金プラン(日本語・公式)

JTCで有料AIを通すには、4つの関門がありました

会社によって違うと思いますが、ぼくの場合はこの4つでした。

  1. 費用対効果はあるのか → 上司・予算部門
  2. 用途はリスク的に問題ないか → AI管理チーム
  3. 情報セキュリティは大丈夫か → 情シス
  4. 契約・規約は問題ないか → 法務

ひとつずついきます!

関門①:上司には「SaaS置き換え」で費用対効果を説明しました

AIの費用対効果って、意外と説明が難しいんですよね。

時間が短縮できると証明するのも難しいし、AIが直接売上を上げるわけでもない。かといって「あれば便利です」では通らない。

なかなか迷子です。

しかも上司は理解があったのですが、予算部門が「これはなんだ」と言い出して、費用対効果を出さないと予算は取れないと。ここの説明がいちばん面倒でした!

そこでおすすめなのが、SaaSの置き換えです。

あなたの職場でも、SaaS使っていませんか。うちにあったのは、名刺管理・RPA・チャットボットでした。

バイブコーディングができる人なら分かると思いますが、これ、ぜんぶ自作で置き換えられます!

(機械の保守パックみたいな、設備の安全に関わる契約は別です。あれをAIの自作で置き換えたら、さすがに事故ります。置き換えていいのは、間接業務のツールだけです)

詳細は言えないのですが、うちの職場ではこのうちいくつかを契約していて、合わせて月12万円ほどでした。いちばん大きいのはRPA(パソコン操作を自動化する月額ツール)で、単体で月5万円です。

ぼくは少なくともいくつかは確実に作れると分かっていたので、Claudeの月額と比べても全然ペイするな、と上司に打診したら、一発OKでした!

「AIで生産性が上がります」より、「月12万円のSaaSを置き換える候補です」のほうが、上司にも予算部門にもずっと伝わります。

ぼくの場合は、Claude Teamを7名で申請しました。

1人あたり月$20(Standardシート・年払い)なので、7名で月$140。日本円だと月2万円ちょっとです。

「月12万円のSaaSより全然安いですよね?」で出したら、これも通りました!

ちなみにClaude Teamは最低5シートから、シートには種類があって、たくさん使うプラン(Premium)だと値段が上がります。

人数とプランで金額は変わるので、申請に出す前に自分の条件で見積もりだけ取っておくと安心です。

出典:Claude 料金プラン(日本語・公式) / What is the Team plan?(Claudeヘルプセンター)

関門②:AI管理チームには「用途のリスク」を説明しました

「AIの管理チーム…?」と思うかもしれませんが、AIの用途が倫理的にまずくないかを見る係です。企業が意外と気にするのがここです!

EU AI Actという、EUのAIに関する法律があります。世界でもかなり厳しい部類で、AIを「リスクの大きさ」で4段階に分けています。

ざっくり言うと、こうです。

  • 禁止されるAI(社会的スコアリングなど)
  • 高リスクAI(採用・人事評価・信用・重要インフラ・医療など)
  • 透明性が必要なAI(チャットボットだと明示する等)
  • 最小リスクのAI(ほとんどのAIはここ)

ここで大事なのは、Claudeそのものを雑に「安全です」「最小リスクです」と言い切らないこと です。

EU AI Actは「ツールが安全か」ではなく「何に使うか」でリスクを判定します。 同じClaudeでも、採用合否の判定に使えば高リスク、社内の文章支援に使えば最小リスク寄り、という考え方です。

高リスクとされるのは、採用、人事評価、教育、信用評価、重要インフラ、安全部品、医療など、人の権利や安全に大きく関わる用途です。

今回ぼくが申請したClaude Teamの用途は、製造部門の間接業務の支援と、社内ツール開発の補助です。

採用の可否を判断するものではありません。

人事評価に使うものでもありません。

設備を自動制御するものでも、医療や信用評価に使うものでもありません。

なのでAI管理チームには、こう説明しました。

「今回の用途は、EU AI Actで高リスクとされる人権・安全に直結する使い方ではなく、社内業務支援とコーディング補助です」

ポイントは、ツール単体で「安全です」と言うのではなく、

  • 何に使うのか
  • 誰に影響するのか
  • 人間の判断を置き換えるのか

を分けて説明することです。こう整理すると、AI管理チームもグッと判断しやすくなります。

結果、「なるほど、OKです」と一発で通りました!

出典:High-level summary of the AI Act(EU AI Act 公式サマリ・4分類)

関門③:情シスには「データ・ログイン・管理機能」を確認しました

情シス向けには、まず「会社が何を不安に思うか」を先に整理しました。

確認したのは、だいたいこのあたりです。

  • 入力したデータは学習に使われるのか
  • そもそもそのサービス自体のセキュリティは大丈夫なのか(パスワードの管理、認証のしくみ、サイバー攻撃への備え)
  • 会社側でユーザー管理ができるのか
  • 退職者や異動者のアクセスを止められるのか
  • 会話履歴や利用状況を管理できるのか。事故が起きたとき、履歴を取り出して説明できるのか
  • ログインはSSO(会社の共通アカウントでまとめてログイン・管理するしくみ)に対応しているのか
  • Claude Codeを使う場合、ローカル環境やソースコードへの影響はどう整理するのか

Anthropicの公式情報では、Claude for Workなどの商用製品では、デフォルトでは入力・出力をモデル学習に使わないと説明されています。

また、データの持ち主はあくまで契約した会社の側で、Anthropicは会社に頼まれて預かって処理する立場、という整理も公式に出ています。情シスや法務が気にする「で、データは誰のものなの?」の答えがここです。

Teamプランには管理者用の画面があって、誰が使えるかの管理、支払いの管理、会社の共通アカウントでのログイン(SSO)、役割ごとに権限を分ける設定などが用意されています。

このあたりを資料として添えると、情シスもグッと確認しやすくなります!

ただし、機密区分やソースコードの扱い、個人情報を入れてよいかは、会社ごとに違います。

ここは「Claudeが大丈夫らしいです」ではなく、

「当社のルールとして、どの情報まで入力してよいかを決めたいです」

と持っていくのが安全です。

もうひとつ、効いたのが「運用は自分が持ちます」の先出しです。

ぼくの職場では、ぼくが管理者になって、台帳でユーザーを管理し、半期に一度、使っていない人がいないか棚卸しをします、と先に差し出しました。「導入したら誰が面倒を見るの?」は、情シスが一番気にするところなので。

ちなみにその台帳管理と棚卸し、Claude Codeで作った自動化アプリでやっています。導入を通すための約束が、そのまま自作アプリの練習台になりました。

関門④:法務には「規約・データ・責任範囲」を見てもらいました

法務に見てもらうとき、意識したのは「Claudeが便利かどうか」ではありません。

「会社として、あとで揉めない形で使えるか」です。

法務が見たいのは、だいたいこの5つでした。

  1. どの規約が適用されるのか
  2. 会社利用として使ってよい契約なのか
  3. 入力データを入れてよいのか
  4. 出力物を業務で使ってよいのか
  5. トラブル時の責任範囲はどうなっているのか

なので、丸投げするのではなく「このあたりを見れば判断できるはずです」という資料セットを作って渡しました。

リンクも全部つけておきます。法務の人はここから一次情報をたどれます!

商用サービス規約とサービス別条件、各ポリシーは英語ですが、ここがいちばん大事な一次情報なので英語のまま渡しました。残りは日本語ページがあります。

会社として契約したアカウントは、組織の代表管理者が管理します。会話やアップロードしたファイル、利用状況のデータをまとめて書き出してほしい、と依頼することもできると説明されています。

このあたりは、法務だけでなく情シスにも見てもらうとスムーズです。

それと、地味だけどおすすめなのが、規約の同意画面はスクショを撮って保管しておくことです。

あとから「誰が、いつ、どの規約に同意したのか」を聞かれたとき、口頭では説明になりません。スクショが1枚あるだけで、監査や社内説明のときの答えが「あります」で終わります。

ここまで資料をそろえると、法務とのやり取りはかなり楽になりました!

今から申請する人へ

JTCは、とにかく説明だらけで時間がかかります。

せめて2ヶ月前から準備しておけばよかった、というのが正直な反省です!

ちなみに「なんでClaudeなの、CodexやGeminiじゃダメなの」は、けっこう聞かれます。ぼくは「自分が一番速くて快適だったから」で押し切りました。

迷ったら、まず会社に「何を確認すればいいですか」と聞くのが早いです。分からなければ、それこそAIに聞きましょう!

最後に、この長い旅でいちばん時間がかかった関門を発表します。上司でも、AI管理チームでも、情シスでも、法務でもありません。

クレジットカード決済の経理処理です。1ヶ月かかりました。

AIのリスクの議論より、支払い方法のほうが手強い。JTCあるあるの完成形として、ここに記録しておきます!

実際に社内説明で使った「費用対効果の作り方」は、別の記事に具体的に書きました。同じように会社でAI申請に詰まっている方は、Substackの返信で状況を教えてください。記事のネタにします!