第1〜4章で、3つの確認を見てきました。 倫理・セキュリティ・契約です。 これで、会社で使っていい安全なAIが決まります。

ここから第二部。 回す前に決めるのは、2つ。 この章は、その1つ目です。

では、「3つの確認をしましょう!」ということを会社のどの決まりに書けばよいか?

直すのに時間がかからない文書に書きます。 多くの会社では、それがガイドラインです。

規程とガイドラインは、重要さがちがう

弊社では規程は会社の決まりでした。 変えるには本部長クラスの決裁が要ります。

起案して、関係部署へ回して、審査。 最後に本部長クラスの決裁。 ここまでで、半年くらいかかります。

ガイドラインは、現場向けの手引きです。 担当部門の判断で直せます。

規程とガイドラインを上下に並べ、規程は本部長クラスの決裁で半年かかること、ガイドラインは担当部門の判断で直せることを示す図

規程のほうが重要。 そのぶん、直すのに手間と時間がかかるんです。

ただ、会社によって文書の呼び名も階層もちがいます。 規程・基準・要領・マニュアル。

なので、変更に時間がどれくらいかかるのか、で決めましょう。

AIの細目は、直しやすいほうに置く

AIは、モデルが数ヶ月で世代交代します。 新しいサービスは毎月出てきます。

ぼくが前の職場に来たとき、規程もガイドラインも、もうありました。 AIのルールは、ガイドラインの側。

規程を変えるのは、とても大変です。 半年くらいかかります。

だから、ガイドラインで柔軟に変えていく。 比較的かんたんに変えられるように、そう設計してあったんです。

しかもAIは、流れがとても速くて改訂が多い。 つまり、ガイドラインの改訂が多くなります。

全部がしょっちゅう変わるわけではありません。 変わりにくい原則と、変わりやすい細目があります。

変わりにくい原則を規程に、変わりやすい細目をガイドラインに仕分ける図

直す回数が多いのは、右の細目。 だから細目をガイドラインに置きます。

直しやすくても、レビューはなくならない

ぼくの最初の仕事は、たまたまガイドラインの改訂でした。

最初は1項目の追加だけでした。 書くのは1週間ほどで終わりました。 ところが、終わるまでに2カ月くらいかかりました。

確認のゲートは4つ。 リーダー、課長、部長、管理チーム全体です。 どのゲートでも、みんなちがうことを言いました。

ガイドラインにすれば、役員の決裁は要らなくなります。 でも、関係者のレビューはなくなりません。

もう規程に書いてしまった会社は

すでに規程の本文に、AIの細目を書いてある場合。 このままだと、細目を1つ直すたびに規程の改訂になります。 半年かかります。

そこで、規程の改訂を一度だけやる。 書き込んだ細目を抜いて、代わりに一行を入れます。 「利用の細部は、別途ガイドラインに定める」。

抜いた細目は、ガイドラインへ移します。

規程にこの一行があれば、下のガイドラインも規程の縛りの中に入ります。 半年かかる改訂は、この1回だけ。 あとの直しは、ガイドラインで済みます。

規程に一行足せば、下のガイドラインも規程の縛りの中に入ることを示す図

そのまま使えるもの

以下の原則と細目は一般的な例です。 前の職場の実際の条文ではありません。

1. どの文書に書くかの決め方

自分の会社の文書ごとに、直すときに決裁する人と、直すのにかかる時間を調べて書き込みます。

文書(例)直すときに決裁する人直すのにかかる時間
規程
基準
要領
ガイドライン
マニュアル

直すのに時間がかからない文書に、AIの細目を書きます。

2. 原則と細目の仕分け

変わりにくい原則変わりやすい細目
AIを使うときは、会社のルールに従う使っていいAIサービスの一覧
許可されたAI以外には機密情報と個人情報は入力しない入力していい情報の区分
出力は、使う人が内容を確認してから使う出力を使うときの確認のしかた
困ったときの相談先
この文書の改訂のしかた

3. 規程に細目を書いてしまったときの改訂

  1. 規程の本文から、AIの細目を抜く
  2. 抜いたところに、次の一行を入れる
  3. 抜いた細目を、ガイドラインへ移す
利用の細部は、別途ガイドラインに定める。

4. ガイドラインの目次の例

  1. 使っていいAIサービスの一覧
  2. 入力していい情報の区分
  3. 出力を使うときの確認のしかた
  4. 困ったときの相談先
  5. この文書の改訂のしかた